地上に於ける質点 $m$ の運動を考えよう。$t=0$ に初速ゼロで図1の原点にいる。まずニュートンの第2法則を使って運動方程式をたてる必要がある。運動方程式を解く最初の例なので、なるべく丁寧に式を追っていくことにする。
$$\large{\frac{d\boldsymbol P}{dt}=\boldsymbol F, \qquad (1)}$$ |
ここで、$\boldsymbol P=m\boldsymbol v$ は運動量。最初に速度を考えよう。その時に、第2法則の中で、与えられているパラメーターは外力 $\boldsymbol F$ であり、地球の重力を代入する。この時に大事な点は、どの様な座標系でこの運動を取り扱うのか、と言うことを明確に定義しておくことである。ここでは、図1のように、鉛直上方を $y$ 軸にとる。力 $\boldsymbol F$ をベクトルのまま第2法則に代入すれば、重力加速度ベクトルを $\boldsymbol g=(0, 0, -g)$ として、
$$\large{\frac{d\boldsymbol P}{dt}=m\boldsymbol g}$$ |
或いは、
$$\large{\frac{d\boldsymbol v}{dt}=\boldsymbol g}, \qquad (2)$$ |
が求める運動方程式になる。次に具体的に速度 $\boldsymbol v=(v_x, v_y, v_z)$、位置座標 $\boldsymbol r=(x, y, z)$ についてこの微分方程式を解く。そのためには更に具体的に、運動方程式を $x$-, $y$-, $z$-成分に分けて表しておくのが便利である。すなわち、
$$\large{
\frac{dv_x}{dt}=0,
}$$
$$\large{
\frac{dv_y}{dt}=0, \qquad (3)
}$$
$$\large{
\frac{dv_z}{dt}=-g,
}$$
|
を連立させて解く。と言っても、この問題は実質的に1次元運動であり、他の2つの方向の初速度=ゼロを考慮すれば、$z$-成分のみを解けばよい。(3) の両辺を時間 $t$ で不定積分して、一般解(積分定数を含み、どんな初期条件の場合の解も含む広い解)が
$$\large{
v_x=C_x,
}$$
$$\large{
v_y=C_y, \qquad (4)
}$$
$$\large{
v_z=\int dv_z=-g\int dt=-gt+C_z, \qquad (C_i,\ i=x, y, z: \text{積分定数})
}$$
|
と得られる。$x, y$ 成分は重力の成分がゼロなので、積分定数のみ。
位置座標 $\boldsymbol r$ は、(4) 式を時間についてもう一度不定積分して、一般解が
$$\large{
x=\int v_x\,dt=C_xt+C'_x,
}$$
$$\large{
y=\int v_y\,dt=C_yt+C'_y, \qquad (5)
}$$
$$\large{
z=\int v_z\,dt=-g\int t\,dt=-\frac{gt^2}{2}+C_zt+C'_z, \qquad (C'_i:\text{積分定数})
}$$
|
と求まる。初速度 $\boldsymbol v(t=0)=\boldsymbol v_0=0$ から、$C_x = C_y= C_z = 0$ なので、速度の特(別)解が、
$$\large{
v_x=v_y=0,
}$$
$$\large{
v_z=-gt,
}$$
|
と求まり、位置座標は
$$\large{
x=C'_x,
}$$
$$\large{
y=C'_y,\qquad (6)
}$$
$$\large{
z=-\frac{gt^2}{2}+C'_z,
}$$
|
で、$t=0$ で $\boldsymbol r=0$ の初期条件を代入して、$C'_x= C'_y= C'_z=0$ から位置座標の特解が
$$\large{
x=0,
}$$
$$\large{
y=0,\qquad (7)
}$$
$$\large{
z=-\frac{gt^2}{2},
}$$
|
と定まる。
投げ上げの例
次に図2の、水平面に対して角度 θ で投げ上げる例を考えよう。前の例と違う点は、初速度がゼロでない点のみである。従って、初期条件を代入して特解を求める前の一般解、(4), (5) が、そのままこの例でも使える:
$$\large{
v_x=C_x,
}$$
$$\large{
v_y=C_y, \qquad (4)
}$$
$$\large{
v_z=\int dv_z=-g\int dt=-gt+C_z, \qquad (C_i,\ i=x, y, z: \text{積分定数})
}$$
|
及び、
$$\large{
x=\int v_x\,dt=C_xt+C'_x,
}$$
$$\large{
y=\int v_y\,dt=C_yt+C'_y, \qquad (5)
}$$
$$\large{
z=\int v_z\,dt=-g\int t\,dt=-\frac{gt^2}{2}+C_zt+C'_z, \qquad (C'_i:\text{積分定数})
}$$
|
そこで、順番に初期条件を代入して図2の場合の特解を求めよう。
$t=0$ で $\boldsymbol v(t=0)=\boldsymbol v_0=(v_0\cos\theta, 0, v_0\sin\theta)$ なので、速度の特解は、
$$\large{
v_x=v_0\cos\theta,
}$$
$$\large{
v_y=0, \qquad (8)
}$$
$$\large{
v_z=-gt+v_0\sin\theta,
}$$
|
となる。同様に、位置座標は $t=0$ で $\boldsymbol r=0$ なので、$C'_x= C'_y= C'_z=0$ から
$$\large{
x=v_0t\cos\theta+C'_x=v_0t\cos\theta,
}$$
$$\large{
y=C'_y=0,\qquad (9)
}$$
$$\large{
z=-\frac{gt^2}{2}+v_0t\sin\theta+C'_z=-\frac{gt^2}{2}+v_0t\sin\theta,
}$$
|
と決まる。
x と y の関係
次に、ある時刻 $t$ の時の $x$ と $y$ の関係を、時刻 $t$ を消去して調べよう。(9)-1 から
$$\large{
t=\frac{x}{v_0\cos\theta},
}$$
|
なので、
$$\large{
z=\frac{-gx^2}{2v_0^2\cos^2\theta}+x\bullet\tan\theta, \qquad (10)
}$$
|
の $x$ の2次関数の関係、放物線運動が得られる。
この式から、空気抵抗がない時に、θ を何度にすると最も遠方まで飛ぶかを確かめることが出来る。地面に落下したときに $z=0$ なので、$x$ について整理すると、
$$\large{
x=\frac{2v_0^2\cos\theta\sin\theta}{g}=\frac{v_0^2\sin 2\theta}{g},
}$$
|
なので、$\sin 2\theta$ が最大になる $\large{\theta=\frac{\pi}{4}}$ の時に最も遠方の $\large{\frac{v_0^2}{g}}$ まで飛ぶ。面白いことに、この距離は、真上に初速 $v_0$で投げ上げたときの高さ $\large{\frac{v_0^2}{2g}}$ の、丁度2倍になっている。
問 良く知られているように、最も遠くまで投げるには、45度の角度で投げるのが良い。さて、実際には、空気抵抗がある。この場合は、最長飛距離を出すには、角度を増せばよいか?それとも小さくすべきだろうか?
# 07.5.1