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ベクトル

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大きさと方向を持つ量(少なくとも2つ以上の成分を持つ量)をベクトル量と呼び、大きさのみを持つスカラー量と対比して用いられる.

表記例(位置座標)

直交座標:(x, y, z)、 極座標:(r, θ, φ)、 記号:V ,
ベクトルの基準点は任意の位置に置いて良い.

ベクトルの種類

極性ベクトルと軸性ベクトル

本来方向を持つ量を表すベクトルを極性ベクトルと呼ぶ
例)変位ベクトル、速度ベクトル、力ベクトル

本来方向はないが、適当な約束でその方向を定めたベクトルを軸性ベクトルと呼ぶ
例)面積ベクトル、角速度ベクトル

ベクトルの和と差

2つのベクトルを a=axi+ayj+azkb=bxi+byj+bzk とする.

和、差

a±b = (ax±bx)i+(ay±by)j+(az±bz)k

ベクトルのかけ算

内積スカラー積、積はベクトルではない)

ab=ab cosθ,

i, j, k を直交座標の3つの単位ベクトルとすると、これらは互いに直交するので、

ii=jj=kk=1, ij=jk=ki=0

となる.従って、

ab=(axi+ayj+azk)(bxi+byj+bzk)=axbx+ayby+azbz

が得られる.

ベクトルの長さ:a=(a•a)½=(ax2+ay2+az2)½

外積ベクトル積、積はベクトル)

|a×b|=ab sinθ, 方向は右図の通り.
従って、平行なベクトルの外積はゼロになる.

i×i=j×j=k×k=0,

i×j=-j×i=k, j×k=-k×j=i, k×i=-i×k=j

が成り立つ.従って、

a×b=(axi+ayj+azk)×(bxi+byj+bzk)

=(aybz-azby)i+(azbx-axbz)j+(axby-aybx)k

が得られる.

外積の別の表記

外積の応用例

外積を用いて三角関数の加法定理を求める.

a=a(i cosα + j sinα)、b=b(i cosβ - j sinβ)とすると、

b×a=b(i cosβ - j sinβ) × a(i cosα + j sinα)

=ab(i×i cosβcosα +i×j cosβ sinα - j×i sinβcosα - j×j sinβsinα)

=ab(sinαcosβ + cosαsinβ)k

外積の定義から、b×a=kabsin(α+ β) なので、

sin(α+ β) = sinαcosβ + cosαsinβ

が得られる.

スカラー三重積(結果はスカラー量(体積))

a•(b×c)= aS=Sa cosβ=V=(a×b)•c=[abc],

ここで、a cosβ はベクトル abc で作る平行6面体の bc で張る底面から測った高さ h に等しい.[abc] は、グラスマンの記号と呼ばれ、abc cabbca と順番に入れ替えても結果は変わらない事を意味する.しかし、交換するとマイナスがつく.その大きさは、左の図に示すように、3つのベクトルで張る並行6面体の体積を与える.





ベクトル三重積(結果はベクトル量)

a×(b×c)=[a[bc]]=b(ac)-c(ab)

(a×bc=–c×(a×b)= –a(cb)+b(ca)

ベクトルの微分


ベクトルの微分の成分は、成分の微分.円運動の場合は、半径の長さr は一定なのでその2乗(内積、rr=C)も一定.それを時間で微分すると、

d(r •r)/dt = dC/dt = 0, ∴ (dr/dt)•r + r•(dr/dt) = 2r•(dr/dt) = 2r•v = 0, ∴ rv

が得られ、半径ベクトルと速度ベクトルは常に直交していることが分かる.等速円運動の場合は速さv も一定なので、全く同様にva=0が得られ、速度と加速度が直交していることが示される.

ベクトルの積分

1)スカラー変数による積分:
例:移動量(ベクトル量)

vdt=(∫ vxdt, ∫ vydt, ∫ vzdt)

2)内積の積分(接線線積分)
例:仕事量(スカラー量.)
点AからBまでの接線線積分

ABF•dr=∫ ABFxdx + ∫ ABFydy + ∫ ABFzdz

3)面 積分(スカラー量)
Sの上の面積分

SA•dS=∫SA•ndS

S は面積ベクトル、n は面の法線(面積)単位ベクトル.

4)体 積分(スカラー量)

φdr=∫φdV=∫∫∫φdxdydz=∫∫∫φr2sinθdrdφdθ

体積要素(右図参照):dV=dxdydz=r2sinθdrdφdθ

*ガウスの発散定理VdivAdv=∫SA•dS(体積分 => 面積分)

*ストークスの定理SrotA•dS=∫CA•ds (面積分 => 線積分)


1)スカラー三重積とベクトル三重積の成分を書き下し、ベクトル三重積の(A)式を確認せよ.
2)cos(α + β) = cosαcosβ–sinαsinβをベクトルを使って証明せよ. 

座標の回転

a=axi+ayj=ax'i'+ay'j'i, j のスカラー積をとると

ax=ax'i'•i+ay'j'•i=ax'cosφ - ay'sinφ

ay=ax'i'•j+ay'j'•j=ax'sinφ + ay'cosφ

ハミルトンの演算子・ナブラ ∇

∇ = i/∂x + j/∂y + k/∂z

勾配 (Gradient)

gradφ = &nablaφ = i ∂φ/∂x + j ∂φ/∂y + k ∂φ/∂z = (∇xφ, ∇yφ, ∇zφ)

例)保存力

U を重力や電場などのスカラーポテンシャルエネルギーとすると、働く力F

F= -∇U(r)=(-∂U/∂x, -∂U/∂y, -∂U/∂z)=(Fx, Fy, Fz)

で与えられる.例)z=h(x, y) 、U=mgz とすると、

F= -∇U(x, y)= -mg(i ∂h/∂x + j ∂h/∂y + k ∂h/∂z)= -mg(i ∂h/∂x + j ∂h/∂y)= -mg(i tanθx + j tanθy)

任意の方向 s(単位ベクトル)の力の成分は力との内積を取って、

Fs= -s•F= -mg(s•i tanθx+s•j tanθy)

で得られる.右図の様にx-z 面内で sh(x, y) の接線になっている場合は s•i=cosθxs•j=0 なので(一般的には方向余弦になる)、Fs= -mg sinθx が得られる.これは、直接求めたFs= -(∂U/∂s)= -mg sinθx に等しい.

ベクトルの方向微係数・発散 (Divergence)

divA = ∇•A = ∂Ax/∂x + ∂Ay/∂y + ∂Az/∂z

発散の意味は、微少体積x, Δy, Δz)から出てくる(電荷から出る電気力線の様な)湧き出しを表す.と書くと、Ax(x+Δx)ΔSx+Δx の位置の微少面積ΔS=ΔyΔz から出ていく量で、x の位置の微少面積ΔS から入るAx(x)ΔS を引き、体積ΔV で割っているので、ゼロにならない分が単位体積から湧き出す量になる.他の成分も同様に理解できる.

gradient の発散

div∇φ = ∇•∇φ = ∇2φ = Δφ = ∂2φ/∂x2 + ∂2&phi/∂y2 + ∂2φ/∂z2

ナブラの発散 2 は、ラプラス演算子、ラプラッシアンと呼ばれる.

(参考)ラプラス方程式:2φφ=0、ポアッソン方程式:2φ=ρ(ρは電荷密度)

ベクトルの回転 (Rotation, Curl)

ナブラとベクトルの外積

また、A=rotB の時、BA のベクトルポテンシャルと呼ぶ.(スカラーポテンシャルと比較)

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