ESR group
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 たいした装置は使っていませんので、あまりお見せする物はありませんが、徐々に揃えていきたいと思います.

☆低周波ESR装置(吸収線形測定用)

 低周波ESRは、有機物質中のスピン磁化率を測定する目的に適している。SQUID磁化率は感度は良いが温度に依存しないPauli常磁性と反磁性を区別できないが、ESRで測るのは常にスピン磁化率である。この目的には従来、電磁石を用いて低磁場でESRを測定し、次に磁場を上げてプロトンNMR等を測定してそれらの信号面積を比較してスピン磁化率の絶対値を求めていた。これは確実な方法ではあるが、測定に時間がかかるのが欠点と言えよう。もう一つ不都合な点を上げると、線幅の広いESRの場合には、磁場変調法を用いざるを得ない電磁石の場合には、信号強度のロスが増加することがある。

 写真に示す低周波ESR装置は、液体窒素デュアー内に設置された空芯コイルで作る低磁場でESRのみを使ってスピン磁化率を見積もる事を目的としている。磁場変調はかけず、静磁場を10Hz程度と比較的速く掃引して積算により信号強度を得ている。また、磁化率の構成には、DPPH等の標準試料と測定試料(線幅が広い場合には分離は容易)を同じ試料コイルに入れて同時に測定する。磁場変調に寄る微分法では、線幅の広い方のS/Nが線幅の比の2乗で下がるが、吸収曲線を測定する場合には、それぞれの全磁化が信号に寄与する事と、線幅の広い信号も、単純にスピン数の比で測定できるメリットがある。

 測定時間は、電磁石を用いる微分法に比べて桁違いに測定時間を減らす事が出来ている。また、電磁石の様に、ESRとNMRで交互に磁場を変える必要も無く効率的な測定が出来る特徴を持つ。 


☆STM & AFM

 スイス・Nanosurf製のSTM・AFM装置で、測定は空気雰囲気、常温のみ対応です。この写真は、STM用のヘッドをコントローラーに接続した状態です。AFMは、ヘッド部分をコネクタから外して交換します。コントローラーのUSBポートにパソコンを接続し、専用のアプリで測定、解析をします。AFMを測定する場合には、ヘッドの下に除振装置を置く事により、かなり振動雑音を減らす事が可能です。STMのヘッドは、耐振動性が良く考えられており、除振装置が無くても振動の影響はかなり押さえられている。その理由は、PrIrのSTM短針を固定する台の中で比較的重量のある試料固定用の金属円柱を3点支持しているため、外部の振動が両者一体を揺らしても、短針と試料台の間の振動にはなり難いためだと思われる。

 空気中でも、HOPGの原子像は比較的容易に観測できる。しかし、測定領域を数nm平方程度まで狭くしていくと、どうしてもドリフトが出るため、補正が必要になる。右の写真は、森くんが測定したα-(ET)2I3の硫黄π電子像で、高い分解能とS/N比が得られている。


☆グラブボックス

 我々の実験対象は有機物が中心で、更にドーパントとしてアルカリやハロゲンなども含まれるため、試料によっては空気中の酸素や水分と敏感に反応します.そこで、その様な試料は、空気の代わりに不活性気体のヘリウムガスの雰囲気中で取り扱います.2つの丸い金属の蓋を開けると、大きな黒いゴム手袋が付いています.中には試料の重さを量る精密天秤や、微少試料を拡大して液晶画面で観測しながら操作するためのビデオ顕微鏡も装備されています.この箱のなかのヘリウムガスは、常に循環しながら酸素や水分を除くために精製装置に送られています.中の酸素、水分濃度はppm (parts per million, 百万分の一)に制御されています.水分量が少ないため、マイナス100度C以下にならないと結露しません.