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11月26日(H16)の講義の疑問点について

一番多かった疑問は、講義の最後に話をした、磁場中の超伝導体の表面エネルギーに付いてでした.ちょっと質問の時間を設ければ良かったと、後悔しています.

右の図は、第一種の超伝導体の場合に相当する絵です.クーパー対のコヒーレンス長が、磁場の侵入長よりも長いケースです.表面からξ以上奥に入ると、クーパー対が存在する超伝導状態なので、超伝導状態の自由エネルギーFS だけ常伝導状態よりもエネルギーが低く安定しています.しかし、臨界磁場程度の外部磁場が加わると、その磁場をマイスナー効果によって超伝導対外に排出する訳ですが、その際に必要なエネルギー、HC2/8πだけ系のエネルギーが上昇してしまいます.従って、これらの合計、

だけ系のエネルギーの上昇が起こります.コヒーレンス長ξが磁場侵入長λよりも長い時には、マイスナー効果により外部磁場を排出するのに要するエネルギーの方が、超伝導状態のエネルギーの下がりより大きくなってしまいますので、外部磁場に接した表面が存在するとその分だけエネルギーの損失になります(表面の自由エネルギーが正).そのために、超伝導体全体が壊れるまでは磁場の侵入を許さない方が、よけいな表面を作らないため得をすることになります.


失礼しました。長らくの間、ξとλが入れ間違っていました。遠藤君、ご指摘有難う!

その逆に、コヒーレンス長ξが短い(不純物や格子欠陥などによる散乱が電子の記憶を失わせますので、平均自由行程の短い)超伝導体においては、外部磁場の大きさがHc1よりも大きくなると、磁場が存在して、且つ超伝導状態にある表面層は超伝導の自由エネルギー分だけ得をするので(表面エネルギーが負)、量子磁束のかたちで常伝導の糸が超伝導体内に入ることを許した方が系全体のエネルギーを下げることになります.

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