HOME | 無重力下で蝶は正常に飛べるか? | Dpt. Phys. TMU |
ジェット機が急上昇した後、エンジンの駆動を止めると、その後は放物線を描いて落下する。その時の速度が上昇する前の、危険の少ない 20秒間注1だけ擬似的な無重力状態を経験することが出来る。その中で行った実験の一つが、「蝶は正常に飛べるか?」であった。オンエアーされたビデオの抜粋を見てもらうと分かるように、蝶は重力下では前方に羽ばたいて進むが、重力が無くなると、どちらが上か分からなくなったように、くるくると円を描いて回ってしまった。ちょっと神秘的でもあるこの光景は、見てしまった後では、「何だ、そうか!」という、
ニュートンの運動法則を考えなれている人には至って当たり前の光景であった注2。 |
![]() 図1:蝶の羽ばたきと推力の関係 |
![]() 図2:蝶の羽ばたきによる並進運動と回転運動 |
さて、それでは何故、蝶は円舞を舞ったのかを考えてみよう。右図は、番組中に組み込まれた蝶の羽ばたきとその推進力の関係を示している。重力に逆らって浮くためには、空気を下方に送り出して、下向きの運動量を作ると同時に、前に進むために、後方にも押し出している。この図では、後ろ向きの矢印の方が長いが、実際には、重力によって引っ張られる力を打ち消すほどの、下向きの力に対して、前向きの力は、ずっと小さくて済むことに注意する必要がある。すなわち、蝶は、前、というよりは、
ほぼ真上方向(僅かに前向き)に羽ばたいている。 |
この様子を絵にしてみると、図2のようになる。羽が、空気の運動の反作用として、受ける揚力は、羽が固定された点に働く。その力の方向には、重心が来ないため、重心の並進運動と、その周りの回転運動に分けられる。並進運動を起こさせる推進力FTは、重心と羽の固定点とを結ぶ線、L 上に来る。一方、回転運動を起こさせる「重心からの腕の長さ r」と「推進力の、線 L に垂直な成分、FR」を掛け合わせた大きさの力のモーメントが働く。1回羽ばたく度に、これらの運動を行うので、図3のように、
![]() 図3:無重力下の蝶の羽ばたきによる「バック転」 |
蝶は「バック転」を、「否が応でも」、始める |
# 07/4/1