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ティッシュを吸い込む掃除機のホース長をどこまで伸ばせるか?
シャボン玉のストローはどこまで伸ばせるか?

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疑問1:掃除機はティッシュを何メートルまで吸えるか?(07/3/23、19:00。)
疑問2:シャボン玉のストローはどこまで伸ばせるか?



図1:限界実験1:掃除機の最大ホース長

図2:限界実験2:シャボン玉の最大ストロー長

 これも、お馬鹿実験の一つであるが、ティッシュ1枚を掃除機で吸い込む際に、どの位長くホースを伸ばすことが出来るか?ということである。判断する根拠さえハッキリすれば、大まかなところは計算で予測できるはずである。番組で用意したホースは(太さは??)1km までであった。原理的にはいくらでも吸い込めるが、それを妨げるのが、何と、
「空気摩擦(粘性)」
である。

 同時に行われた実験の一つ、4 mm のストローを使ってシャボン玉を膨らます際に、ストローの軸を何メートルまで伸ばすことが出来るか?も、全く同じ状況の問になる。ストローのように、細いために、空気の流量が限られている場合は、層流(なめらかな流れ)以外は起こりようが無く、乱流の因子を考えなくて済む分、結果は明快に推測できるはずである。しかし、一番の要因は、やはり、人がどの程度の負圧を肺で作ることが出来るか?に掛かっている。

測定条件


図3:限界実験1:掃除機の吸い込み長の条件

 この番組に引っ張り出された学者連は、基本的に話に多少の信憑性を与え、面白くする、という役割を担っている、多くの出演者が意識しているように。その心は、番組中にコメントを求められる内容をちゃんと検討するには、いかにも与えられるパラメータが少ないことにある。この掃除機の例で行くと、掃除機のパイプの直径や、吸い込み能力の情報がありませんでした。長距離を経て吸引するには、掃除機が負圧をどこまで生み出せるかに掛かっているが、それが数値としては分からないので、全くの推測の話になってしまう。そのために、必然的に
学者連の答えは大きくばらつく
ことになる(と思う、一つの要因として)。

実験結果

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1000 m 挑戦(抜粋:約22MB)

 実験結果は、用意した最長のホースまで、ティッシュ1枚は吸引できた。その時の吸引速度は、0 m で、10 m/s、1000 m のホース接続時で、約 2.4 m/s であった。この間抜けな実験(結構、エキサイトしていましたが)の結果をどの様に考えればよいのでしょうか。専門によって、用いている式は色々でした。しかし、基本的に、非圧縮性流体に適用する式を引っ張り出してきた、と言うのが実情でした。私は、教養の教科書に載っている式である、粘性摩擦がある場合の l [m] の長さのパイプ内の 流速 v(l) [m/s] を与える、
ハーゲン・ポアズイユ(Hagen-Poiseuille)の式、v(l) = R2(P0-P)/8ηl
を適用した。この式の前提は、水のように、圧力が変化しても体積が変わらないような、非圧縮性流体に対して、パイプの内面に接した流体の流速は摩擦のために常にゼロであると考えている。また、この式の特徴は、流速が、パイプ両端の圧力差 P0-P とパイプの断面積 πr2 に比例し、空気の粘性係数注1 η = 1.8×10-5 [Pa • s] とパイプの長さ l に反比例することである。流速 [m/s] から流量 [m3/s] にするには、さらに断面積を掛けるので、同じ長さのパイプに流体を流すときに、太さの4乗に比例して流れやすくなると言う顕著な特徴を持つ。直径、約 3 cm の掃除機パイプに比べ、直径 4 mm のシャボン玉ストローは約三千分の一しか流れず、如何に空気が流れにくいかが想像できる。

パイプの長さの見積もり

 ここで、R = 1.5×10-2 [m] P0-P = 5×104 [Pa]、ティッシュが流れる速さを 10 m/s とすると、
ティッシュを吸い込めるパイプの長さは、約 8 km
となる。この数値は、かなり過大評価、大きく見積もりすぎである。実験結果は、1 km の時に、流速が、約 2.4 m/s と測定されている。過大評価になった理由として、掃除機が生み出せる負圧の過大評価が考えられる。0.5 気圧としたが、その数分の一、或いは一桁くらい小さいかも知れない。これらの数値を、逆にハーゲン・ポアズイユの式に代入すると、パイプ両端の圧力差として、1.5×103 [Pa • s] と求まる。この見積もりが実験を正しく与えていると仮定すると、気圧にして、
実験で用いた掃除機の負圧は、0.015 気圧
ということになる。この値がどの程度の妥当性を持つのかは、現時点では確かではない。掃除機の吸い込み口をほとんど塞いだときに、どの程度の圧力になっているかを測定してみれば確認できるはずである・・・。でも、ちょっと弱すぎるかな?と言う感はあります。ハーゲン・ポアズイユの式が非圧縮性流体の式なので、空気のように圧力で体積が変わる場合には、
加えた仕事が空気の膨張に使われてしまうので、ハーゲン・ポアズイユの式では流量を過大評価してしまう(圧力差の過小評価)
のでしょう。

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シャボン玉をふくらませることが出来る直径 4 mm のパイプの長さは?

 次に、シャボン玉のストローを考えてみよう。実験で成功した 460 m の時に、どの程度の流量があるかを考えればよい。11 秒掛けて作ったシャボン玉の体積約 4 cc から、空気の流量 V は約 0.4 cc/s 或いは、4×10-7 m3/s なので、これらの情報から、V(l) = πR4(P0-P)/8ηl [m3/s] を使って、肺で作れた圧力の大きさを見積もることが出来る。 R = 2×10-3 [m] を代入すると、
大野君の肺で生み出せた圧力は、0.004 気圧
と言う結果が得られました。掃除機の四分の一ですね・・・、イヤー、十分強いですよ・・・。

しかし、ストローの場合にも言えることですが、
加えた圧力が空気の圧縮に使われてしまうので、0.004 気圧は小さく見積もりすぎ
だと考えられます、いや、断言できます。

注1流体内の分子間に働く摩擦を考慮して求めた、摩擦の強さを表す指標で、単位は [Pa • s] = [N • s/m2]。流れる速度が異なる流体が接している面積あたりに働く応力 τ = η dv/dy として定義される。パイプの壁面に接した流体の速度がゼロなので、壁際で半径方向の単位長さ当たりの流速の変化率が最も大きく、摩擦も大きい。その結果として、速度分布が放物線型になる。


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# 07/4/1

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