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ティッシュを吸い込む掃除機のホース長をどこまで伸ばせるか? |
図1:限界実験1:掃除機の最大ホース長 |
図2:限界実験2:シャボン玉の最大ストロー長 |
これも、お馬鹿実験の一つであるが、ティッシュ1枚を掃除機で吸い込む際に、どの位長くホースを伸ばすことが出来るか?ということである。判断する根拠さえハッキリすれば、大まかなところは計算で予測できるはずである。番組で用意したホースは(太さは??)1km までであった。原理的にはいくらでも吸い込めるが、それを妨げるのが、何と、
「空気摩擦(粘性)」 |
同時に行われた実験の一つ、4 mm のストローを使ってシャボン玉を膨らます際に、ストローの軸を何メートルまで伸ばすことが出来るか?も、全く同じ状況の問になる。ストローのように、細いために、空気の流量が限られている場合は、層流(なめらかな流れ)以外は起こりようが無く、乱流の因子を考えなくて済む分、結果は明快に推測できるはずである。しかし、一番の要因は、やはり、人がどの程度の負圧を肺で作ることが出来るか?に掛かっている。
図3:限界実験1:掃除機の吸い込み長の条件 |
この番組に引っ張り出された学者連は、基本的に話に多少の信憑性を与え、面白くする、という役割を担っている、多くの出演者が意識しているように。その心は、番組中にコメントを求められる内容をちゃんと検討するには、いかにも与えられるパラメータが少ないことにある。この掃除機の例で行くと、掃除機のパイプの直径や、吸い込み能力の情報がありませんでした。長距離を経て吸引するには、掃除機が負圧をどこまで生み出せるかに掛かっているが、それが数値としては分からないので、全くの推測の話になってしまう。そのために、必然的に
学者連の答えは大きくばらつく |
実験結果は、用意した最長のホースまで、ティッシュ1枚は吸引できた。その時の吸引速度は、0 m で、10 m/s、1000 m のホース接続時で、約 2.4 m/s であった。この間抜けな実験(結構、エキサイトしていましたが)の結果をどの様に考えればよいのでしょうか。専門によって、用いている式は色々でした。しかし、基本的に、非圧縮性流体に適用する式を引っ張り出してきた、と言うのが実情でした。私は、教養の教科書に載っている式である、粘性摩擦がある場合の l [m] の長さのパイプ内の 流速 v(l) [m/s] を与える、
ハーゲン・ポアズイユ(Hagen-Poiseuille)の式、 | v(l) = R2(P0-P)/8ηl |
ここで、R = 1.5×10-2 [m] 、P0-P = 5×104 [Pa]、ティッシュが流れる速さを 10 m/s とすると、
ティッシュを吸い込めるパイプの長さは、約 8 km |
実験で用いた掃除機の負圧は、0.015 気圧 |
加えた仕事が空気の膨張に使われてしまうので、ハーゲン・ポアズイユの式では流量を過大評価してしまう(圧力差の過小評価) |
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次に、シャボン玉のストローを考えてみよう。実験で成功した 460 m の時に、どの程度の流量があるかを考えればよい。11 秒掛けて作ったシャボン玉の体積約 4 cc から、空気の流量 V は約 0.4 cc/s 或いは、4×10-7 m3/s なので、これらの情報から、V(l) = πR4(P0-P)/8ηl [m3/s] を使って、肺で作れた圧力の大きさを見積もることが出来る。 R = 2×10-3 [m] を代入すると、
大野君の肺で生み出せた圧力は、0.004 気圧 |
しかし、ストローの場合にも言えることですが、
加えた圧力が空気の圧縮に使われてしまうので、0.004 気圧は小さく見積もりすぎ |
# 07/4/1