OMソーラー 自立型の太陽電池の活用(1)

Date: 2013年8月23日
Time: 10:35:03JST
Topic: OMソーラー 自立型の太陽電池の活用(1)

 OMソーラーハウスを1997年に作り、愛用してきましたが、十数年経過してダンパの開閉モーターの故障や動作の異常が起こり始めました。そこで2010年に、太陽電池を活用した自立型のハンドリングボックスに交換しました。70Wの太陽電池2枚でメインの基盤、DCファンを駆動し、もう一枚の同じ70Wのパネルでハンドリングボックスと同じ場所に設置してあるお湯取り用ポンプを駆動しています。このシステムは、バッテリーが無いので、夜間はタッチパネルリモコン(消費電力1-2W)も電源が落ちてしまいます。そうすると、その後エラーが発生するようです。それを避けるためには商用電源を接続しておく必要がありますが、これがどういう訳か30Wも消費します。

 太陽電池は、6寸屋根に載せてあり、真夏よりも春秋に太陽と直面します。そのため、真夏は温度上昇も大きいせいもあり、期待した程の発電は出来ないようです。3枚のパネルで合計210Wになりますから、ハンドリングボックスの14V・2Aで30-40W程度、お湯取りポンプの17Vでやはり30W程度は、太陽電池パネルの発電効率次第ですが、小さいながら余剰出力は取れそうです。これまでの実績では、それ程季節にはよらず晴天で、最大、26V-29V・6A (2013/9/29に7.01Aを記録)=156-174 (レコードは 27V・7A=189W) W程度は取れています。平均的には雲も通るので、4-5A程度、100-130W 強といったところになります。晴天にはDCファンにお湯取りポンプが稼働するので、充電電力にはさほど余裕がありません。でも、少なくともリモートのタッチパネルは1-2Wなので夜間でもバッテリ駆動でモニタが出来ます。それだけでなく、OMの小屋裏内の換気扇も含めたすべてを太陽電池とバッテリーの独立システムで運用しています。季節によりちょっとだけ余りが出ますので、光ルーターやWiFiアクセスポイントなどを必要に応じて切り替えられる様になっています。

 基本的に太陽電池システムのメンテナンスフリー化を目指しています。以下に太陽電池システムで使用している機器などに付いて整理しておきます。徐々に写真や回路図も載せて行きたいです。

 

○太陽電池用バッテリー充電制御器MPPT-15

 太陽電池の充電制御はMorningstar社のMPPT-15 (ヤフーオークション、アマゾンや直輸入で2万円強) を使用しています。MPPTはMaximun Power Point Tracking の様な意味で、最も電力が取れる電圧で負荷を太陽電池に接続することを目的としています。太陽電池は内部抵抗が大きな定電流電源的な性質を持っていますので、その高い内部抵抗 (発電量に依存して変化する) にマッチした負荷抵抗を接続することにより最大の電力を取り出すことが可能になります。その時の太陽電池の出力電圧は、バッテリーの充電電圧とは異なるのが一般的です。そこで、MPPT-15に内蔵されているDC-DCコンバータによってバッテリーの充電電圧に変換してバッテリーに接続されます。太陽電池パネルは、70Wを3枚直列に接続し、バッテリーは24V構成としています。バッテリー電圧はMPPT-15の変換効率が高くなるように設定する意図で決めました。バッテリーの充電モードは3つあります:

・バルク (bulk) 充電モード、

・吸収 (absorption) 充電モード、

・フローティング (floating) 充電モード。

それぞれの意味は次項目で整理します。バルク充電では、充電電圧を約30Vにしています。充電電流の最大値は6A程度になりますので、180Wを3枚直列の太陽電池パネルが供給していることになります。MPPT仕様なので、雨天や曇天でも1-3A程度の充電が出来るようです。このような天気ではOMの負荷が無いので、そっくりバッテリーの充電に利用出来ます。

 

バッテリーバンク:24 V・150 Ah = 3.6 kWh

 太陽電池用のバッテリーには、ディープサイクル用を用いることが多いです。12V・100Ah程度の大型バッテリーを用いることも多いようですが、1つが20-30kgと取扱いが大変なので、最も安くて手に入りやすいLong12V・20Ah (アマゾンで2つで1万円強) を2つ直列にし、24V・20Ah バンクを並列にしています。現在は6バンク+APCの24V・32Ah(30kg以上あり取扱いが大変です!) を並列にして24V・152Ah としています。24Vバンク2つを1つのAC15A或は20Aのブレーカに繋いでそれらを並列にしてMPPT-15のバッテリ端子に繋いでいます。ブレーカを挟んでいるので、バッテリーの付け外しの際の火花を見なくて済んでいます。

 ディープサイクルバッテリーは、深放電(充電容量をほぼ空にする程度の大量放電)に耐えるように作られていますが、深放電した分だけ寿命は短くなります。重いバッテリーを頻繁に交換する気はしませんので、MPPT-15 で満充電で26V程度のバッテリー電圧が25Vになると負荷を切断する設定にしています。これで、放電率は約30%(約1kWh は利用出来る)に抑えられ、寿命はフローティングで用いた場合と大きく変わらず、数年以上使用に耐えると予想しています。

 さて、バッテリーの充電には3つのモードがあります。

バルク充電:充電率がまだ低く、充電制限電流以下であれば太陽電池の出力をそのままバッテリーに溜め込むモードです。

吸収(absorption) 充電:バッテリー電圧が満充電に近い場合には、充電電流を制御してバッテリーを保護しながら充電する必要があります。そのため充電電流値を一定に保ちながら充電しますので、太陽電池パネルの余剰電力は充電制御器内で消費されて熱になります。本システムでは、14.7x2=29.4Vに設定しています。

フローティング充電:充電電圧をバッテリーの満充電電圧で一定に保ちつつ、負荷に電流を供給します。この時の負荷電流は太陽電池パネルの能力に余裕があれば制限はありません。本システムでは、13.7x2=27.4Vに設定しています。

 吸収充電モードやフローティング充電モードでは太陽電池出力が有効に活用されませんので、太陽電池の余剰電力を新たなバッテリー負荷を追加して利用することも有効だと思います。このシステムでは、バッテリーと商用電源を無遮断で切替できる手動スイッチ、或は Vellman 社製の 8チャンネル・インターネットスイッチ VM201 を介して、何時でもネットがあればバッテリーの負荷(無線LANと光ルーター)をON/OFF出来るようにしています。

 

DCファン、お湯取りポンプ、小屋裏換気扇の電源

 OMのハンドリングボックスの制御基盤から、DCファンモーターへの出力、タッチパネル制御盤への信号出力、そしてお湯取りポンプの制御信号が出ています。お湯取りポンプの駆動電源は別に太陽電池パネルから供給されています。

 そこで、バッテリーバンクに蓄えた電力から制御基盤とお湯取りポンプへ、それぞれの直流電源を供給する必要があります。供給電圧は、制御基盤が14V、お湯取りポンプが17Vになります。秋月電子通商のスイッチング電源キット(HRD12008使用)を2つ使って、24Vの入力を14V17Vに出力を調整しています。キットは12V、8Aに設定されていますが、スイッチングレギュレーターのフィードバックの抵抗比を変更して出力を調整しました。

 DCファンは、14Vで駆動すると、24Vバッテリーからの出力電流は、送風強度を弱で0.8A(20W弱)、中1.5A(36W)、強 3.7A(90W) 程度でした。DCファンの送風強度はOMの目標棟温で変化します。夏期はDCファンに加え、お湯取りポンプ、小屋裏排気ファンもバッテリーで賄うので、DCファンは中以上にはならないようにOMの目標棟温を高めに設定しています。

 お湯取りポンプの消費電力は、電源電圧に敏感に依存します。お湯取り効率は、ある程度のポンプの回転数が確保されれば消費電力の急増ほどは変化しないと考え、17Vよりも少し下げて16.7V (24V/1.2A=36W) 程度にしています。

 小屋裏には、パナソニックの有圧換気扇(FY-20GSU3)(27W、インバーターロスを加え36W)が設置されていました。バッテリーで駆動するにはなるべく消費電力の小さなファンにしたいので、三菱のEFG-20KBに交換(16W、インバーターのロスを入れて24W)しました。この有圧換気扇の使用温度範囲は40度C以下に指定されているのでヒヤヒヤしながら使っています。今のところ40度以上には余り上がらないようです。電源にはアマゾンで安かったので24V仕様はあきらめて、ラウダの12V・300Wの正弦波インバータを使用しています。無負荷入力電流は12V・0.25A(3W)と謳っています。実測で24V・0.14A(3.4W)なのでそれ程悪くありません(どうも時間が経過すると 0.3A/25V (7-8W) 前後に増加します)。しかし、お湯取りはOMの制御では最後までオフになりませんが、お湯の温度を見る限り、午後3時頃には湯温が飽和している様なので、インターネットスイッチ VM201 のタイマー設定で朝9時から午後3時までオンに制御しています。同様に小屋裏換気扇は、夏期期間は午前10時半にインバーターへの入力をオンにして、夜の11時にオフにしています。

 

インターネットスイッチ VM201(Vellman製)

 これは、8チャンネルのリレー接点がインターネットを介して制御出来る便利な装置です。デンシ電気店で2万円弱で購入しました。これは、直輸入しても送料を考えると妥当な価格のようです。この装置の電源は、何とAC12Vなんです!聞いたことがありません、交流の電源なんて。調べてみると、電源アダプターで交流電圧出力というのがあるのですね。でも、結局、直流の12Vで動くことが分かりました。交流の整流回路が入っていますが、トランスは使っていないので、直流がそのまま通ります。ロジック回路には5Vのレギュレーターがありますので、必要な電圧はリレーの駆動電圧になります。10Vでロジックはちゃんと動きますが、リレー接点が安定にオン・オフしませんので、11V以上は必要です。iPhone用のアプリがあり、ネットで自由にオン・オフが出来ます。便利です。もちろん、PCからもWebブラウザで制御出来ます。OMソーラーのインターネットアダプタは付けなかったのですが、このスイッチがあるなら是非付けておきたかったな、と思います。湯温や棟温、室温などがモニター出来れば不要な電源は切り、必要があれば入れることが出来ます。現在の所、4チャンネルを利用中:

  1. お湯取りポンプ電源(屋根温が下がると、お湯取りはモーターを回してバッテリーを消費するだけなのでタイマーで制御)
  2. 12V駆動の光ネクストのルーター PR-S300SE と Base Station Extreme の電源を、商用の電源アダプターとバッテリーで切替(両負荷で約25W)
  3. インバータのDC12V入力のON/OFF。負荷は小屋裏換気扇とデスク周りの小物負荷(コンセントは独立でデスク回りは 4. でON/OFFを切替)
  4. AC100Vの2極切替リレー(パナHJ2, or オムロン)で、商用電源と 3. のインバータ出力とを切替。バッテリーが一杯になった時の負荷調節用(余り出番は多くはない)

 

太陽電池システムの自動化

 MPPT-15の設定で、バッテリー電圧が25Vになると負荷を遮断しています。そのため、商用電源に24V出力のACDCコンバータを用意し、バッテリー出力が落ちた時にコンバータ出力に自動で切り替えています。オペアンプをコンパレータに使ってバッテリー出力を基準電圧と比較してオン・オフしています。また、24VをDCDCコンバータで12V出力を作り、無線LANと光ルーターに供給しています。バッテリーからの供給が絶えた時には同じ様にオペアンプのコンパレータで自動切替がされます。大きな容量(1,000μF)の電解コンデンサを噛ませてあるので、負荷の動作には切替の影響は入りません。

 また、負荷の制御はAC用のスイッチで手動切替が出来ます。しかし、基本的には並列に挿入した VM201 のリレー接点のタイマー設定とネットワーク越しの制御をしています。お湯取りポンプの17V電源と、小屋裏換気扇用のDCACインバータへの入力も VM201 のタイマー設定で自動化しています。ネット越しに臨機応変に切り替えることも出来ます。