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NHKエデュケーショナル:理科ミュージアム11巻「液体ヘリウム〜超流動と超低温〜」より

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  1. 粘性抵抗を持つ普通の液体ヘリウム:スーパーリークを通過しにくい様子(484 kB)( QuickTime

    とても細かい粉末 (スーパーリークと呼ぶ) を一杯に詰めたガラス管の上の部分に、沸騰している液体ヘリウムHe I)中から引き上げてHe Iをためてやると、細かい粉末との間の摩擦のために、なかなか液面が下がっていかない様子を示しています.超流動になった液体ヘリウム(He II) の場合と比較すると、その差がよく分かります.



  2. 普通の液体ヘリウム(He I)から摩擦のない超流動状態の液体ヘリウム(He II)へ(420 kB)( QuickTime

    極低温下の液体ヘリウムは、火にかけられて沸騰しているお湯の様に、外部から入ってくる熱のために常に沸騰しており、激しく泡立っています.

    真空ポンプによって気圧を下げてやると、富士山の山頂(標高3776m、気圧約638 hPa)では水の沸点が100℃から約63℃まで下がることから想像できるように、沸騰する温度がどんどん下がっていきます.気圧が約37torr (約50 hPa、ビデオの圧力表示では装置の正確度が足りず、ちょっとずれています) になると液体ヘリウムの沸点が約2.17 K (ケルビン:絶対温度) になり、超流動ヘリウム(He II) に変わります(相転移).

    超流動ヘリウム(He II) には摩擦がありませんので、外部から入った熱が温度を上昇させても、瞬間的に周囲から冷やされ、最終的にその熱はHe IIの液面から蒸発していく気体ヘリウムによって運びだされます.そのために、液体内部で沸騰して蒸気の泡がぶくぶく出ることは全くなくなってしまいます.従って、2.17 K 以下になったとたんに沸騰が止み、水のような静かな液面に変わってしまうのです.

    このビデオでは、液体ヘリウムの外側には魔法瓶が2重になっていて、2つの魔法瓶の間には液体窒素(沸点約78 K) が入っています.液体窒素の沸騰による泡が写っていたり、ファイルを圧縮しているためにビデオの分解能が下がっているため、残念ながら、見にくくなってしまいました.


  3. 絶対温度2.17 K 以下で、摩擦のない超流動状態になった液体ヘリウム:スーパーリークも容易に通過する(156 kB)( QuickTime

    ビデオでは、He IIの中に沈んでいたスーパーリーク付のガラス容器 (上図参照) を素早くHe IIの液面より上に持ち上げると、普通の液体ヘリウムHe Iの場合と比べると格段に早くガラス容器内の液面が下がってしまう事を示しています.He IIには摩擦が無いために、細かい粉末がびっちりと詰まっていても難なく通過してしまうためです.もう少し正確に言うと,超流動ヘリウムの振る舞いは,2種類の流動体が混ざっていると考えると種々の現象を良く説明できる事が知られています。その2つの流体:常流動体と超流動体と呼ばれますが,ここでは,それぞれHe IHe IIと書く事にします。

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  4. 超流動液体ヘリウムの噴水現象(344 kB)( QuickTime

    このビデオの説明は、マンガで見る液体ヘリウムの超流動(理工祭資料:小田徹史作)を見ていただくのが分かりやすいのではないかと思います.

    上図のように、白いスーパーリークの上部にたまっているHe IIの中の黒っぽいヒータに流す電流を変化させることによって噴水の高さを変化させています.電流を流すと、ヒータの周囲のHe IIの温度が上昇し、He Iに変わります.そうすると、生じた化学ポテンシャルの違いを打ち消す様に、スーパーリークの下の部分からHe IIが上部に流れ込んで来て、一方で,ヒーターの周りのHe Iスーパーリークを素早く通過できませんので、ガラス容器上部の口から液体ヘリウムが飛び出す事になります・・・


  5. 容器の壁をよじ登ってこぼれ出す超流動ヘリウム(404 kB)( QuickTime

    超流動になったHe II同志の間には摩擦がありません.しかし、ガラス容器の壁に接しているヘリウム原子にはガラスの原子との間に引力が働きます.

    この状況は、ガラスコップの中の水でも同じですが、水の場合には水分子間に強い引力が働いているため (粘性の原因)、一番上にいる水の分子は、その下にいる沢山の水分子に働く重力によって下に引っ張られています.そのために、いくらでもはい上がってガラスコップからこぼれてしまう様なことは通常の条件では起こりません.

    ところが、He IIの場合には起こってしまうのです.壁に引っ張られてどんどん登っていき、容器の口を乗り越えて外側を下に伝っていき、最後は容器の下からポタポタたれ落ちていってしまうのです.壁を伝うHe IIの層の厚みはとても薄いため見えませんが、その速度は毎秒数十メートル以上にも及ぶそうです.

    ビデオでは、最初にガラス容器の口の辺りを写しています.液体ヘリウムの透明度がとても高いため、液面が観察しにくいのですが、光を当てる角度を調節して見やすくしています.口の直ぐしたに液面が見えると思います.その後、容器の下部まで移動していきます.そうすると、容器の丸く尖った底からポタポタたれ落ちるHe IIが見られます.


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NHKエデュケーショナル:理科ミュージアム11巻「液体ヘリウム〜超流動と超低温〜」より

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